点状表層角膜症とは角膜の上皮細胞が部分的に脱落した状態でドライアイとコンタクトレンズ障害の原因が多い
角膜の表面は、皮膚の表皮のように上皮という組織でおおわれていますが、この上皮に点状の傷がついた状態を総称して点状表層角膜症といいます。これは、角膜の上皮細胞が部分的に脱落した状態で、炎症のあるなしを問いません。
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炎症が強ければ点状表層角膜炎あるいは表層性角膜炎という用語も使用されていますが、最近は点状表層角膜症に統一されてきています。点状表層角膜症は病名ともいえますが、所見を示す言葉でもあります。
原因は何か
原因としては非常に多くのものがありますが、最も多いのはドライアイとコンタクトレンズ障害です。また、角膜ではなく眼瞼結膜(がんけんけつまく)(赤眼のところ)や眼瞼縁(がんけんえん)(赤眼とまぶたの皮膚の境界のところで、ここにマイボーム腺という脂(あぶら)を分泌する腺の出口が並んでおり、感染や炎症を起こしやすい)の炎症に伴って生じることもよくあります。
ほかに、この「角膜と強膜の病気」であげるいろいろな病気で、上皮に点状の傷を認める状態を部分的に伴ったり、治癒期にそういう状態をへることが非常に多く、この場合は病名というよりも所見を示しているといえます。
症状の現れ方
異物感を示すことが多いですが、軽いものでは無症状のこともあります。また、非常に多数の傷があれば、痛みや視力低下を生じることもあります。
検査と診断
細隙灯(さいげきとう)顕微鏡(スリットランプ)による検査が重要なことはいうまでもありませんが、そのままでは細かい上皮の傷がわかりにくいので、眼の表面に蛍光(けいこう)の緑の色素を入れて、ブルーの光を当てて診察します(フルオレセイン染色)。これによって、傷のあるところが緑に染まって見えるので、傷の程度や広がりを的確にとらえることができます。
治療の方法
一般に、原因に対する治療を行う(ドライアイ→人工涙液点眼、コンタクトレンズ障害→コンタクトレンズの装用中止、細菌性結膜炎(さいきんせいけつまくえん)→抗菌薬点眼、兎眼(とがん)→閉瞼(へいけん)など)とともに、上皮の傷の修復を早めるようにヒアルロン酸などの点眼を行います。
鈍的眼外傷とは、さまざまな鈍物による眼の打撲の総称
鈍的眼外傷とは、さまざまな鈍物による眼の打撲の総称です。眼球の裂傷はなく、主に打撲により眼球が変形することから生じる網膜(もうまく)、水晶体(すいしょうたい)などの眼内組織の損傷が主な病変です。打撲によって生じる眼窩底骨折(がんかていこっせつ)(眼窩吹き抜け骨折)や眼窩出血、眼筋麻痺(がんきんまひ)などもこのなかに含まれます。
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原因は何か
原因としてはスポーツ中の接触事故、ボール、手拳、出合い頭の衝突事故など、鈍物での打撲があげられます。
症状の現れ方
症状は眼内の病変の程度によってさまざまですが、視力障害が主なものです。主な病変としては、前房(ぜんぼう)出血、硝子体(しょうしたい)出血、隅角後退(ぐうかくこうたい)、水晶体脱臼(だっきゅう)、種々の網膜病変(網膜振盪症(もうまくしんとうしょう)、網膜裂孔(もうまくれっこう)、脈絡膜破裂(みゃくらくまくはれつ)、外傷性黄斑円孔(がいしょうせいおうはんえんこう)など)、眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)などです。眼内に出血すると、その程度に応じた視力の低下を来します。
出血が軽い場合には1週間程度で回復しますが、著しい場合には手術を行うこともあります。網膜裂孔や網膜剥離がみられた場合には、早急に治療が必要になります。また出血のために眼底がよく見えない状態では、網膜病変の有無を知るためにERG(網膜電図)や超音波検査などを行います。
網膜後極部に出血や脈絡膜破裂を来した場合には、中心部が暗く見え、網膜剥離を起こすと視野欠損を生じます。
網膜振盪症はとくに治療しなくても自然によくなります。脈絡膜破裂は後極部に起こりやすいものですが、中心窩(か)に発症すると視力低下を来します。水晶体の脱臼は眼圧の上昇を起こしやすいため、長期の経過観察が必要になります。
隅角後退では外傷性の低眼圧を来し、時に手術を必要とすることがあります。眼窩底骨折では眼球運動障害を生じ、複視、眼球運動痛、吐き気・嘔吐、鼻出血などを来します。
検査と診断
眼球内の病変の的確な診断を行うために、一般的な眼科検査(視力検査、眼圧測定、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査など)が必須となります。ほかに補助診断法として超音波検査、画像診断(X線検査、CT検査、MRI検査など)、電気生理学的検査(ERG検査など)を必要に応じて行います。
治療の方法
眼内の損傷に対してはまず止血薬、消炎薬、鎮痛薬などの薬物療法を開始します。眼内の出血が強い場合には手術を行うこともあります。眼窩底骨折で複視がはっきりしている場合には、早期に手術を行います。
病気に気づいたらどうする
視力障害がある場合はもちろん、視力障害がない場合でも、眼科専門医の診察を受けることが大切です。とくに高度近視眼やアトピー体質がある場合には、網膜剥離や水晶体の脱臼などを生じやすいことが知られています。
ドライアイは涙が減って、眼の表面が乾いて、いろいろな症状を起こしてくる状態をドライアイといいます
涙は、悲しい時や痛い時に出るだけでなく、常に少しずつ分泌され、眼の表面(角膜・結膜の表面)を常に薄い涙の膜でおおって保護し、栄養を与えています。
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涙の層は、角・結膜側から順に粘液層、水層、油層の3層構造をとっています。この涙が減って、眼の表面が乾いて、いろいろな症状を起こしてくる状態をドライアイといいます。
基本的には、乾性角結膜炎や涙液減少症というのも同じことですが、ドライアイという用語は、非常に軽度の人や涙の質的異常の人も含めて広く使用されています。たとえば、傷がなくても眼が乾くという症状があればドライアイですし、涙の水分量は正常なのに短時間で蒸発してしまう場合(油層の形成が悪い場合)もドライアイです。
それに対して、涙液減少症は涙の量が実際に減少している場合に、乾性角結膜炎はそれに加えて何らかの傷がある場合に限定されて使用される用語です。しかし、最近はすべてドライアイで総称するようになってきています。
原因は何か
一般的には、涙液の分泌は年齢とともに低下してゆき、とくに女性のほうが乾きやすくなる傾向があります。さらに、あとに述べるような環境要因が加わると容易にドライアイの状態になります。
このような軽いドライアイの人が大多数ですが、シェーグレン症候群という非常に重症のドライアイがあります。この場合の原因は自己免疫といって、自分の唾液腺(だえきせん)と涙腺を自分の免疫が攻撃し、破壊することによって生じます。そのため、眼が乾くだけでなく、のども渇くというのが特徴で、また、関節リウマチなどの他の自己免疫疾患をしばしば合併しています。
別項で述べる兎眼(とがん)でも、非常に重症のドライアイを起こします。また、スティーブンス・ジョンソン症候群も後遺症として最重症のドライアイを起こし、強い角結膜の瘢痕性混濁(はんこんせいこんだく)を伴って著しく視力が低下し、眼疾患のなかでもとくに難治となります。
症状の現れ方
眼が乾く、ころつくというような症状が一般的ですが、軽いタイプのドライアイでは充血する、眼が疲れるといった症状の場合もあります。重症の場合は、視力も低下してきて、ころつきをとおり越して眼痛を訴えることもあります。
ドライアイは左右差はもちろんありますが、通常は両眼性です。
検査と診断
ドライアイでは、涙の分泌が低下しているかどうかをみる必要があります。いくつかの方法がありますが、シルマー試験という方法が最も一般的です。
これは下の赤眼のところに帯状の濾紙(ろし)をはさみ込んで、これが徐々に濡れてくる状態を測るやり方で、ドライアイではこの濾紙がしばらく待ってもあまり濡れてきません。濡れ幅が5分で5mm以下の場合に、分泌低下と判定されています。
また、眼の表面の傷をみるには、点状表層角膜症(てんじょうひょうそうかくまくしょう)で述べたフルオレセイン染色で角膜の傷の状態をチェックしますが、結膜の傷はフルオレセインではわかりにくいので、ローズベンガルという赤い色素で染色します。
治療の方法
涙液の分泌を増やすのが理想ですが、残念ながら現在まだそういう治療は確立していません。そのため、外から人工涙液を点眼して補うか、あるいは、分泌された涙を眼の表面で長く保たせるようにします。
後者の方法としては、フードのついた眼鏡(ドライアイ眼鏡)をかけて涙の蒸発を減らす方法と、涙が鼻へ抜けていく通路をふさぐ方法が行われています。
まぶたの縁の鼻側の端にある涙点というところが、その通路の入口にあたりますが、ここにお風呂の栓をするような形で涙点プラグというものを差し込むことによって、比較的簡単に通路をふさぐことが可能です。
病気に気づいたらどうする
ドライアイは、環境要因がその病状を非常に左右する病気です。昔はあまり問題になっていなかったのに、最近の日本で爆発的に患者さんが増えているのもそのためです。
コンタクトレンズ、エアコン、コンピュータ作業はドライアイを助長する3大要因なので、症状がひどい時は、コンタクトレンズの装用をやめる、コンピュータの作業時間を減らすなどの注意が必要です。
また、エアコンの噴出する車の助手席には座らない、自分の部屋に加湿器を備えるなど周囲の環境を乾燥しにくいようにアレンジしていくことも重要です。
乾くからといって点眼薬を使いすぎると、そこに含まれている防腐剤によって角膜の表面が余計に傷んでしまうので、点眼の回数が多い場合は、防腐剤を含んでいないものを使用するようにしましょう。
トラコーマとはクラミジアという微生物による結膜炎で世界的にはとても多い病気
クラミジアという微生物による結膜炎です。衛生環境のよい日本では現在、トラコーマの発症はまずみられませんが、世界的にはとても多い病気です。
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アフリカ、地中海東部、アジアなどのクラミジアの流行地域では繰り返し感染する機会が多く、トラコーマが発症するといわれています。日本では日清戦争時に、兵士がトラコーマに感染して帰国してから蔓延(まんえん)したといわれており、1910年代には日本のトラコーマ罹患率は20%を超したとのことです。
なお、クラミジアによる結膜炎には封入体(ふうにゅうたい)結膜炎もあります。
症状の現れ方
トラコーマは、以下の4病期に分類されます。
- 第1期
5~12日の潜伏期間ののちに発症します。まぶたがはれ、結膜が充血してむくみ、粘液膿性の眼脂(がんし)(めやに)が出ます。眼瞼(がんけん)結膜には軽度の乳頭増殖と濾胞(ろほう)(小さなぶつぶつ)が現れます。 - 第2期a
濾胞は大きくなり、結膜から角膜に血管が侵入してきます(パンヌス)。この病期は約3カ月から3年です。 - 第2期b
細菌感染を合併し、乳頭増殖が強くなります。結膜の浸潤も強くなります。 - 第3期
瘢痕(はんこん)形成が始まり、パンヌスが角膜をおおうようになります。角膜潰瘍を合併することが多いようです。 - 第4期
まつ毛が乱生したり、眼瞼内反、ドライアイになり、視力障害を残します。
検査と診断
病歴と症状からほぼ類推することができます。
治療の方法
眼科専門医を受診してください。時に手術療法が効果的です。
トキソプラズマ性網脈絡膜炎はトキソプラズマと呼ばれる単細胞の原虫(げんちゅう)による眼の寄生虫感染症
トキソプラズマと呼ばれる単細胞の原虫(げんちゅう)による眼の寄生虫感染症です。この原虫は、網脈絡膜炎の主要な原因のひとつです。
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先天性感染と後天性感染があります。一般的には先天性の両眼性のタイプや、それらの瘢痕病巣(はんこんびょうそう)の再発が主ですが、近年は免疫不全状態の人、とくに後天性免疫不全(こうてんせいめんえきふぜん)症候群(エイズ)の人での発症が注目されています。
原因は何か
このトキソプラズマは、日本人では約30%の人が体内にもっていると報告されています。ただし、この場合は症状を示しません(不顕性(ふけんせい)感染)。
問題となるのは先天性感染の場合です。いまだ感染していない妊婦の人が、寄生虫をもつネコやイヌ(それらの糞便(ふんべん)に寄生虫が存在)に触れたり、生肉の摂取、取り扱いにより感染することがあります。これらが胎盤経由で胎児に感染すると、全身トキソプラズマ症になり、眼の症状として、とくに黄斑部(おうはんぶ)に網脈絡膜症が生じます。
後天性の場合は、その原因はいまだはっきりとはわかっていません。免疫力が落ちた場合に発症することが多いといわれています。
症状の現れ方
症状は、先天性と後天性で異なります。先天感染の場合は、眼球振盪(がんきゅうしんとう)、斜視(しゃし)などを合併し、病変が黄斑部(網膜のいちばん感度のよい部分)を侵すために、視力障害が生じます。また、先天感染の瘢痕病巣が再発した場合は、飛蚊症(ひぶんしょう)や視力低下の症状が生じてきます。
エイズの人などに起こる後天感染では、激しい硝子体混濁(しょうしたいこんだく)、前眼部の炎症による痛み・羞明(しゅうめい)(まぶしく感じる)、飛蚊症、視力低下が起こります。
検査と診断
この病気の診断で重要なのは、眼底検査と血清学的な検査です。典型的な眼底像は、先天感染では黄斑部に存在する境界明瞭な壊死性(えしせい)瘢痕病巣であり、その再発の場合は、瘢痕病巣に隣接する滲出病変の存在です。
近年増加している後天感染では、限局性滲出性網脈絡膜炎(げんきょくせいしんしゅつせいもうみゃくらくまくえん)の形をとりますが、陳旧性(ちんきゅうせい)(発症してから時間が経過している)の病変は伴わないのが特徴です。後天性のなかには、視神経乳頭周辺滲出物(ししんけいにゅうとうしゅうへんしんしゅつぶつ)、硝子体混濁、切痕状(せっこんじょう)視野欠損を3主徴とするイエンセン病があります。
これら眼底病変に加え、先天感染、後天感染ともにトキソプラズマ血清抗体価(IgG、IgM)の上昇が診断にとって重要です。
治療の方法
日本ではこの病気に対し、アセチルスピラマイシンの内服治療が行われます。約4~6週間内服し、効果がある場合は継続します。発症に免疫反応が関与していることが示唆されているので、ステロイド薬の内服を併用する場合もあります。
先天性またはその再発の場合、診断・治療方針は、ほぼ確立されています。問題は後天感染の場合です。先天性のような典型的な眼底像を伴わないため、診断に苦慮することが多いのが現状です。
また、前述したように発症原因もいまだ明らかではありません。しかし、その背後に何らかの免疫不全状態があると考えられ、それによる不顕性感染の顕性化(今まで体内にいて病気を起こさなかったものが突然に病気を引き起こすようになること)が指摘されています。このような場合、背後に何らかの全身性の病気が隠れていないかを調べることが重要です。